PC9801に関する技術情報
PC9801拡張情報
PC9801RA2上で行った様々な拡張に関する情報です

●PC9801-100を用いた98RA2内蔵SCSI-HDDの実現

■概要

PC9801RAは拡張性が高く延命しやすいが、例えば内蔵SCSI-HDDを実現するには色々注意が必要であった。RAの「R」は5インチFDD搭載モデル,「A」は,その中で最上級のCPUを持つことを意味するようだが、このRA2と改良型のRA21の間に内蔵SASI-HDD搭載、内蔵SCSI-HDD搭載という仕様の違いがある。従ってRA2以前の機種でSCSI-HDDを使用するためには、Cバス上にSCSIインターフェースカードを搭載する必要がある。NEC純正SCSIボードとしては、一般に55互換のSCSIボードが知られているが、92互換でPnP対応のSCSIボードPC9801-100も魅力がある。BIOS無しでもASPI(Advanced SCSI Programming Interface)マネージャのみで動作するという利点があり、SCSIボードがBIOSに認識されないようなケースにも対応可能であるだけでなく、PC9801-100には一部に内蔵コネクタ用パターン付きの個体が存在しており、50pinコネクタをはんだ付けすることで(外部に出たSCSIケーブルを筐体の隙間から内部に戻すなどしない)完全な内蔵HDD化も実現可能である(下画像)。PC-9801-92互換なので NECチェックも有りません。以下、PC9801RA2を用いて動作確認している。
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■PC9801-100ディップスイッチ仕様

PC-9801-100 (NEC)

PnP対応のCバスSCSI-2インターフェース。コネクタはDsubハーフ50ピン(外部接続用)。Windows2000対応。NEC純正としては最後のCバス対応SCSIボード。ハイレゾモード非対応。PnPの設定,非PnPモードでの割り込みレベルの設定は付属のSCSI設定ユーティリティを用いてボード上のEEPROMチップ内の情報を書き換えることで行う。ボード上の5連ディップスイッチによる設定は非PnPモード時のみ有効。

・5連ディップスイッチ:SCSI BIOSアドレスとI/Oポートアドレスの設定
1-2-3-4:SCSI BIOSアドレスの設定
 OFF-OFF-OFF-OFF■DC000h~DFFFFh (出荷時設定)
 ON-OFF-OFF-OFF■D8000h~DBFFFh
 OFF-ON-OFF-OFF■D4000h~D7FFFh
 ON-ON-OFF-OFF■D0000h~D3FFFh
 ON-ON-ON-OFF■BIOS切り離し
5:I/Oポートアドレスの設定
 ON■3840h~387Eh(偶数),386Dh
 OFF■1840h~187Eh(偶数),186Dh (出荷時設定)

本ボードを2枚実装する場合,SCSI設定ユーティリティを使用して以下のように設定:
(a)起動ドライブが接続されたボード
 メモリアドレス:有効(BIOS無効以外) I/Oポートアドレス:18xx(SW5をOFF)
(b)起動ドライブが接続されていないボード
 メモリアドレス:無効(BIOS無効) I/Oポートアドレス:38xx(SW5をON)
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■PC9801-100EEPROM仕様

EEPROMは基板上に表面実装されており、オリジナル(当該個体)では「C56M120XAC (所謂93C56)」の刻印がされている。使用するIOポートアドレスや、PnPモードまたは非PnPモードのどちらであるか、非PnPモードであればIRQ番号(3、5,6から選択)などの情報が書かれている。この設定書き換えソフトウェアはEZ-SCSIのようなドライバソフトウェアには含まれておらず、SCSI Selectという別のソフトウェアが必要である。この純正ソフトウェアは入手困難であるが、おふがお氏作のソフトウェア"AHASEL98"で設定することができる(詳細は「5.PC-9801-107/108ボードの設定ディスク(「無いと困る?」ハードウェア設定FD)」が詳しい)。

imgAHASEL98 - AHA1030 series Setting Tool


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1番ピンは慣例に従い画像左下である。基盤パターンから右上6番ピンが5番ピンGNDに短絡されているのがわかる。これは、8bitアドレス動作設定を意味している。逆に、この6番ピンがVccに接続されていれば16bitアドレス動作のはずであるが、あいにく老朽化したボードのEEPROMの書き換えを試みたためか、あたかも16bitアドレスかのような書き込み動作が発生し正常に書き込みが行えずEEPROM内容が破壊されてしまうという現象に遭遇してしまった。その結果IOポートからはFFしか返らなくなり、PC98上ソフトウェアからは書き換え不可能な状態となった。
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当該EEPROM(93C56)は今でも様々なメーカのものが新品入手可能であり、今回はCSI製のものにあらかじめ正しいEEPROM内容を書き込んだ上で付け替えることで復旧した。EEPROMライタ(EEPROM Writer CH341A)はAmazonで1500円前後で購入可能である。ROMライタとEEPROM間の結線やWindows用書き込みソフトについてはYoutube上など多くの情報がある。また、書き込みソフトについても情報は多くあるがGitHubから入手できるAsProgrammer_2.1.0.12が93c56の8bitアドレッシングにも対応している。EEPROM内容破壊時に使用していた書き込みソフトは上述の"AHASEL98"だが、EEPROM交換後は同じ"AHASEL98"で適切に内容書き換えできることを確認した。オリジナルEEPROMのほうもROMライタで何度か直接読み書きしてやると正常な書き込みが復活したが、この機会にEEPROMは新品に交換とした。ROMライタやCSI製93C56の仕様書は以下(EEPROMはどこのメーカのものを用いてもよく、基本的に仕様は同じだが、下記CSIの仕様書にも記載されているように、一部にピン配置が標準とは異なるバージョンも存在するため型番と仕様の確認が必要である)。

imgCH341A ROMライター
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imgCatalyst Semiconductor(CSI) CAT93C46.PDF


imgおふがお氏Twitter(EEPROM全内容256Byteのサンプル画像多数あり)
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■デバイスドライバ

Buffalo EZ-SCSIVER3.07Jに含まれるaspi2dos.sys(98用 ※AT互換機用は不可)(およびaspidisk.sysを用いた。デバイスドライバの設定はaspi2dos.sysの引数にてIOポート番号(/p1840)の指定およびIRQ番号の指定(/q3 ※デフォルト5から変更する場合は必須)を行った。この状態でV30モードではaspi2dos.sysがHDDを認識。EZSCSI附属のツール等でパーティションを切り再起動するとaspidisk.sysもパーティションを認識するようになる(aspidisk.sysはパーティションを切っていないHDDを認識できない)。BIOSはHDDを認識してないようで、formatコマンドなども固定ディスクのメニューは出てこない。
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当該PC9801RA2はCPUを486に換装しているためか、486にCPUを切り替えるとaspi2dos.sysがHDDのIDを正しく読み取れず認識できなかった(正確にはSCSIデバイス型をHDDプリンタと誤認識。IBMの文字も正しく読めず「M M」と表示されている(以下写真))。一方で、BIOSはHDDの存在は認識したようで、formatコマンドで固定ディスクの選択肢が表示されるようになった(ただし、HDDにアクセスはできずフォーマットすることはできない)。Transfer ModeがPIOなのでCPU速度が上昇することでSCSIバス上の伝送が早まり(CPU高速化やSCSI内蔵コネクタを独自改造している等含めて)何らかの問題が露呈したと推測される。
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以下、使用したHDD(IBM_2G_SCSI_HDD_DORS-32160)の問題になってしまうが、まず、当該HDDのジャンパ設定には罠があり、仕様書を確認すると、6番ピンの内部ターミネータは本モデルには搭載されていない旨(Internal terminator is not equipped in this model)記載がある。一方で、基板上のチップの1つにUC5608DWPの文字があり、これはアクティブターミネータである(即ち、使用した個体についてはターミネータが搭載されている)。本題に戻り、上述の誤認識は単純なターミネータの付け忘れではなく、HDDジャンパ設定の変更や外部にActiveターミネータを取り付けただけでは状況は変わらない。HDDジャンパ設定にあるUnit Attention無効化や同期/非同期ネゴシエーション、転送速度などのASPIマネージャ設定変更を行っても状況は変わらない。

HDDの個体差については「Adaptec製 AHA-1030Pが 2枚の場合 (動作 OK):Cバス用 SCSIボードの 2枚挿し」に類例の記載がある。この報告では、ICM RX-500 (DSAS-3540)、IO-DATA U2HD18.2G (DNES-318350W)、IO-DATA UHDS3.2G (Fireball ST 3.2GBに交換)、が動作。IO-DATA UHDS4.3G (DCAS-34330)、IO-DATA UHDS2.1G (DCAS-32160)、内蔵 DCAS-32160 (疑似スルーボード経由)、IO-DATA U2HD9.1G (SG ST39173LW)、が動作せずとある。このうちIBM製品に着目すると、動作しなかったDCAS-32160はDORS-32160と同じ容量2GbyteのUltra SCSI(SCSI-3)HDDであり同型の後継モデルである。仕様書上はSCSI-2と互換性がある旨記載があるが、PC9801-100との接続においては、Identification stringあるいは、SCSIコマンドINQUIRY (12)に対するHDDの応答Inquiry data(IBMから始まる文字列など)が崩れている。一方で、正常動作報告のあるIBM製品DSAS-3540はSCSI-2、DNES-318350WはUltra2Wide、でありSCSI-3より上位の規格の下位互換性では問題が出ていない可能性がある。

imgIBM 2G SCSI_HDD DORS-31080_32160.PDF

imgUC5608DWP

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■HDD取り付け金具

内蔵HDDを取り付ける金具には、PC-9801BX系や9821Xa系の内蔵IDE-HDDであるPC-HD340Bの金具を流用できる。IDEディスクが壊れ金具のみが安価で流通している場合がある。PC98RA2には下部のでっぱり2か所のうち前側1つと上部のねじ穴の前側1つが適合しており、SASI内蔵HDD用拡張スペースへのSCSI-HDD増設に利用できる。PC9801RA本体にねじ穴をあけるなど簡単な加工を加えれば完全に金具が適合するが、単純に金具の後方でっぱりを内側にペンチで曲げてしまうのが、最も簡単な流用方法になる。この場合、前方上部ねじ1本での固定になるが十分使える(ねじ1本での固定がどうしても気になる場合は、後方のねじ用に本体シャーシにねじ穴1つあければ、ほぼ完全な固定も可能)。固定できてしまえば、内蔵SASI金具よりも入手しやすくコンパクトで扱いやすい。

imgFellow・MATE-B・初期MATE-XのHDD内蔵用金具の寸法 (PC-HD340B)

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●PC9801~互換機間のシリアル接続

■概要

PC9801RA(MS-DOS)とAT互換機(Windows10)間は、シリアル通信でコマンド入力やファイル転送等を行うことができる。昨今はWindows側にシリアルポートがついていないケースが多くなってきていると思われるが、これはELECOM UC-SGT (PL2303) のような昔からあるUSB~シリアル変換ケーブルを使えば事足りる。残念ながら古い型番のデバイスは最新のドライバでは認識しなかったり、デバイスドライバが動作を停止するようになっている(海賊版対策の弊害という情報あり)。このため、①UC-SGT (PL2303) 上のEEPROM内のデバイス番号を新しいデバイスのものに書き換える、②少し古いデバイスドライバを使用する(例えば3.3.2.102なら動作)、③ドライバの更新を抑止するパッチソフトの実行、を行うか、現在販売されているデバイスを再購入する必要がある。

imgPL2303_64bit_Installer.exe (ドライバ)
imgPL2303デバイスIDの書き換え手順
imgPL2303 Code 10 Fix(make a change in the registry so that Windows can never update the driver without your permission)





 

●Windows10内の仮想シリアル接続

■概要

PC9801エミュレータとPC9801実機やWindows10上の任意のソフトウェアと通信するために、Windows10上に仮想シリアルポートを作成すると至便である。例えばcom0comは仮想的にCOM2、COM3を作りそれをクロス接続することができ、Windows上アプリケーションからPC9801エミュレータへシリアル接続することができる。また、"RS-232C Link for MS-DOS(LNK98.EXE)"はWindowsとMS-DOS(PC-9801)をRS-232Cクロスケーブル(リバース)でつなぐことにより、Windows側をMS-DOSのリモート端末にすることができる。dirなどコマンド実行やファイルの送受信をリモート操作で実行できる。残念ながらcom0comとの併用は相性があまりよくないようである。

imgcom0com-3.0.0.0-i386-and-x64-signed.zip
imgRS-232C Link for MS-DOS (Vector Free soft)





 

●無線USBマウス接続

■概要

クラシックPC研究会の製品に、「USBマウスをPC-98x1へ接続(角)」というUSBマウスをバスマウスに変換できる変換ケーブルが存在する。これを用いて例えばLogitech無線USBマウスを接続することができる。USBキーボードの変換ケーブルも別製品で存在しており、USBマウス、USBキーボードをそれぞれ接続することができる。(※当該製品はクラシックPC研究会HP上からは削除されているが、オークションサイトなどで販売されている場合がある)。頑丈なPC98純正キーボードと比べてマウスは物理的に最も壊れやすい消耗品の1つだが、バスマウスの入手は困難になってきており、この変換アダプタが切り札となる可能性がある。

imgクラシックPC研究会

※なお、キーボードにも同様のUSB変換が存在する。キーボードはキーを垂直にまっすぐ上にキーを引き抜き、スイッチ部分に接点復活剤を注入することで接触不良が改善することが多い。さらに、*(アスタリスク)キーのような複数の入力方法があり、使用頻度の比較的低いようなキーとスイッチ部分を入れ替えはんだ付けする方法もある。


 

●電源のコンデンサ交換

■概要

電解コンデンサの電解液蒸発により電源ユニットの動作不良が発生する。電源ユニットには、SANKEN ELECTRIC製、トーキン製の2種類があり電源ユニット内部の基盤パターンが異なる。それぞれ以下のように修理成功報告がある。トーキン製については、コンデンサの外見上は変形などなかったが記事記載のC9不良を実際に経験した。

imgSANKEN ELECTRIC製
http://www2.ucatv.ne.jp/~m_okubo.moon/pow/pu463.html
ポイントは小容量の、電解コンデンサです。RS用のユニットの場合、 C12の足に緑青が発生しており、その部分の基盤が汚れていました。そのコンデンサを外し、同等のものに交換します。 電圧は50V、容量は10マイクロF以上、容量の方はあまりこだわる必要はありません。取り付ける前に、基盤の汚れたところ を丁寧に拭いておきます。この1個のコンデンサを取り替え、仮組して電源を入れると、無事復旧しました。気になる方は、 他の小容量電解コンデンサを、予防交換しておいても良いでしょう。これに味を占め、放置してあったRXから取り外したと思われる、もう1個の電源ユニットも、修理してみることにました。今度は、 別のコンデンサC23が悪くなっていました。50V4.7マイクロFです。同様に交換すると、1発で成功です。


imgトーキン製
https://ameblo.jp/tyamatu/entry-11947443564.html
中々情報がないなか目がとまった情報がネットに上がっていた35V47μFを替えたら動いたというものだった。大きなコンデンサーとブリッジの間にある小さなコンデンサーC9がそれであった。膨らんでる。
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●AT互換機への5インチFDD接続

■概要

シリアル通信以外のデータ送受手段として、5インチFDDドライブをAT互換機に接続する方法がある。PC9801用のドライブをジャンパ設定を変更して互換機に搭載する方法がよく知られている。PC98では同一ドライブで2HD、2DD、2Dなどのメディアを全て読むことができるが、互換機では基本的にはこのような仕様になっておらず、2HD専用(2DD専用)で動作させるのが確実である。また、MS-DOSフォーマットの読み書きはできても、N88BASICやコピー防止目的でDOSとは異なるフォーマットを採用したディスクなどはPC9801のドライブを用いても、PC9801上で動作させるようには読み書きできない。FD1155C、FD1155Dといったドライブが容易に設定変更できる。

imgPC/AT互換機のWin98にてPC98 1.2MBフォーマットのフロッピーディスクを読む


■PC9801の5インチFDDイジェクト用バネ交換

FDDのイジェクト時にFDDがあまり出てこなく取り出しにくい場合、バネ交換により改善することが知られている。

https://98epjunk.shakunage.net/fdd/mntfd1155d.html イジェクト時にメディアの出が悪い場合には,イジェクト機構のバネの力が弱っていることが考えられます.このバネは,和気産業(WAKI)製 ユニクロ 引きバネ SR-721(0.4×5×20mm)やTRUSCO(トラスコ)製 引張ばね ステンレス TESS77134(0.4×5.4×15.5mm)に交換できます。TRUSCO TESS-77134 はイジェクト時には5インチメディアが8割程まで飛び出してくる勢いになります。WAKI製じゃ満足できないというヘビーユーザー向けです。


 

●PC9801入出力ポート仕様

■概要

archive.orgには、メモリ・I/Oポートを機能別に収録した「UNDOCUMENTED 9801/9821 Vol.2 - メモリ・I/Oポート編」テキストがアーカイブされている。残念ながら主にSJIS形式で保存されたこれらドキュメントは文字化けを起こしており、読みづらくなっている。以下、部分的に基本的な仕様に関するテキストについて、漢字コードをUTF8に変換したものも掲載する。(UNDOCUMENTED 9801/9821 Vol.2 - メモリ・I/Oポート編(オリジナルアーカイブ)

※以下漢字コード修正複写